ホタルの墓 [その他]

ジブリのホタルの墓を初めてちゃんと観た。
噂には聞いていたが、かなりの鬱映画である。


しかしだ。私はこの映画を単純な反戦ものや、戦争孤児もののお涙ものとして解釈する気には
ならなかった。むしろ、あまりにも日常に見えたのである。

良くも悪くもリアリズムである。
この映画に救いはない。幼い二人が、戦争という時代において、ただ生きたという物語である。

清太も節子にも、やりようはあったかもしれない。
引き取りての伯母にも、対応のやり方はあったかもしれない。

けれど、そこに生じた出来事はごく自然のうちであり、これ以外の
流れなど、生まれてくるはずもないのである。

世の中の動静に、巻き込まれた家族がいた。
父は出兵し、母と子供の二人。ある日の空襲で、母とはぐれたがゆえに、
母は爆撃で帰らぬ人となり、その孤児たちである二人は生活を取り戻せずに死んだ。

この映画に込められたものはなんだろうか。

幽霊となった清太は、もどかしそうに過去を見つめている。
もっと違う方法があったのではないか。そう悔やんでいるのだろうか。

私が知っている戦争体験の話は、祖父に聞いたものや近所のおばあさんから聞いた話である。
そこにあったのは、ただ、ただ生活である。そして、あのような状況下では、
自分たちの生活が大事であって、他人の面倒など、到底みられるものではなかった。

これと現代を対比し、今の人は幸せだという人もいるだろう。
私は違うと思う。

私には清太や節子は、精一杯、生きただけではないかと。そして、
それは今の時代を生きる人間たちと、何も違わないのではないかと思う。

その時にできることをして、それがたまたま不幸な最後になってしまったのだと。

これは現代人だって同じことである。
今の生活のためにできることをやって、生き延びている。そういう事なのだ。

確かに、彼らは不幸であったと思う。
現代人の感覚から言えば、可哀想としか言いようがない。
だが、あの当時からいえば、ごく日常のありふれた光景だったのだ。

我々の日常でも、本来は、死というものは隣り合わせである。
そして、世間の冷たさも、人の冷淡さも、ごく日常である。

我々は、同じようにリアリズムの世界を生きているのだと、
きっとこの映画はそう言いたかったのだと思う。

nice!(0)  コメント(2) 

nice! 0

コメント 2

お名前(必須)

ジブリ作品は好きではないけれど、観てみようと思いました。
きっかけをありがとうございます。
by お名前(必須) (2021-07-12 13:29) 

D-Blue

コメントありがとうございます。
ちょっとネタバレを書いてしまっていますね、すみません。

高畑監督の作品は常に、エンタメから離れたところにあります。
なので、とっつきにくいのですが、描かれているものに中身が
あります。それをどう評価するのかは人それぞれでしょうか。

思い出ぽろぽろとか、かぐや姫とか、たぬき合戦とか、
ぜひ合わせてご覧になってはどうでしょうか。
宮崎駿監督とは違うテイストがありますよ。
by D-Blue (2021-07-12 19:47) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。