電気と文明 [思考・志向・試行]

多くの人は、ビットコインやEV、AIなどに興味をもっているだろう。
また日々の中で、スマホをつかい、クレジットカードをつかい、人によっては
マイナンバーカードを利用している事だろう。

これらに共通することがある。
それは「電気」である。

あまり意識しないことがだろうが、駆動するシステムは常にエネルギーを要する。
動的な事が要求されるシステムにはそれが不可欠である。
そして、現代ではもっぱら電気による。

電気を生み出すにはどうするか。
それは電磁気学の応用による。簡単に言えばモーターを回すということ。
実に簡単な話で、現時点での発電所というのはすべてモーターを回しているのだ。

このモーターをどうやって回すかという点で様々な手段があるだけで、
すべての電気システムはモーターを回す事が最終的な手段である。

追記:太陽光発電は違いました。これはトランジスタの性質を利用した光による 発電でモーターが不要です。

モーターを回すというのは「仕事」が必要になる。
その仕事をさせるには、なんらかの物理的な性質を利用する。

それは熱であるか、化学反応であるか、はまたま位置エネルギーであるか、
空気の運動であるか、という違いがある。

これらが発電方式の違いを生み出す。だが、どの方法であっても、
必ず最後はモーターを回す。これが原理なのだ。

仕事から電気を取り出すにはどうしても、ロスが生じる。
カルノーサイクルなどで習った人も多いだろう。仕事の変換にはかなりのロスがある。

よって、できるだけロスを減らすべきなのだが、
これがなかなか難しい。

例えば、車はガソリンを燃焼させることで空気の膨張を生み出し、その膨張力を
ピストン運動に変換している。燃焼という化学反応によって生じる空気の運動が
仕事となっているわけだ。

昨今の問題は、この燃焼時にCO2が発生するという事である。
だから、CO2の発生を抑制するためにEV化を目指そうという話になっている。

だが、EVに用いられる電気はどうやって生み出しているのだろうか?
もし、化石燃料を燃やしているならば、そこでもCO2は生み出されているわけで、
しかも、発電した電気をわざわざもう一度充電池という化学反応に置き換えて、
それをさらに化学反応を生じさせてモーターを駆動する。仕事の変換が増えて
ロスが多くなる。

では、EVによってCO2排出が削減されるかは果たして本当なのか?
調べるのがかったるいので、推測するが、現代の車と同等のものを動かす電力を
作り出すということは、ロス分を含めると、余計な電力が必ず必要となる。
それは間違えないことだ。よって、電気をどうやって生み出すかという点が
問題であり、石炭や石油による発電に依存するなら、CO2削減になどなりはしないと言える。

https://looop-denki.com/home/denkinavi/energy/powergeneration/percentageofpowergeneration/
このサイトによれば、
2019年度の日本における発電量の電源別の割合は天然ガス37.1%、石炭31.9%、石油等6.8%、
水力7.8%、水力以外の再生可能エネルギー10.3%となっています。
また、再生可能エネルギーの内訳は太陽光6.7%、バイオ2.6%、風力0.7%、地熱0.3%です。

ということで、石炭と石油でおよそ40%ほどはCO2を排出する発電方式である。
加えて天然ガスは、石油の発電の70%ほどのCO2を排出する。
https://www.hokurikugas.co.jp/company/environment/merit.html
よって37の7割、28%程度とすると、全体で70%程度はCO2を排出する発電方式と言える。

EVには仕事のロスがあるので余計に電力を使う。するとEVを走らせることで
CO2が削減できるといっても、せいぜい10~20%程度なものであろう。
もっといえば、EVを生産するには石油が必要であり、リチウムの採掘という負荷的要素もある。
結局EVがCO2の排出にどれくらい貢献しているかは微々たるものになる可能性が高いのだ。

そしてガソリン車に比べて耐用年数が低く、次から次に乗り換える、もしくは電池交換が
必要となれば、製造によるエネルギー損失と、リチウム資源の枯渇という問題を生み出す
だろう。果たしてEV乗り換えが本当に良いといえるのかは大いに疑問なのだ。

もっとも良いのは、当然であるが「乗らない」ことである。
これが最大のCO2排出削減である。


さて、電気に話を戻そう。
上記示したように、昨今の生活はかなりの面で電気に依存したテクノロジーを利用している。
その一方で、電気の生産には常に枯渇という問題が横たわっている。
すると、我々はかならずエネルギーの制約に直面することになる。

AIやビットコインが存在できるのは、そこに膨大なエネルギーが投じられているからに
過ぎない。超高速な演算を必要とするこれらの技術はエネルギーがなければただの箱
なのだ。そして、近い将来、エネルギーは制約を受ける。

すると、AIやビットコインが永続するとは考えにくい。

日本という地理的なことを言えば、南海トラフ大地震が起こったとしよう。
かなりの広い範囲で停電が続くことになる。

もし、この時に電気による生活に依存していたらどうなるか。
ビットコインは使えなくなり、AIも当然使えない。ペイペイだって、クレジットカードだって
使えないのだ。当然、スマホが使えないし、そもそも携帯の基地局の破壊によって、
電波そのものが使えなくなる。

それが1週間程度ならまだしも、およそ数ヶ月から半年ほど続いたとしたらどうだろうか。

我々に必要なのは、電気ではなく生活のインフラである。
水と熱源、食料。これらが最低限必要なものだ。
AIもビットコインも電力危機に対しては全くの無力となる。
LLMの進化が問われているが、しばしば発生する停電によって、
壊滅的な打撃を受けると私は予測する。

その時、大事なのは結局、古いテクノロジーである。

もちろん、ビットコインのように世界中のPCによって担保されているデータであれば、
局所的な電気問題など問題ではなかろう。だが、個人としてみれば、十分に無力になり
得るのだ。AIもしかりである。いざという時ほど、利用価値がなくなるだろう。

これがわかっている人たちは、発電所を作り出すか、
電気に依存しない生活を検討するか、を模索しているはずだ。

現代は電気の制約が大きいのである。
現代のテクノロジーは電気エネルギーに依存しすぎているのだ。

電気代が現在高騰中だ。私たちは電気を使うとしても、もっと身近に発電する方法を
模索する必要があるかもしれない。必要な電気を身近なエネルギーから変換する。
それは太陽光か風力か、地熱か、とにかく、現代のような大掛かりな送電網など
不要な仕組みを考えておかなければ、カタストロフィが生じた時に生き延びるのは
難しくなるだろう。

かつて恐竜たちは、体を大きくし、その生存率を伸ばした。
ところが、そのせいで巨大隕石衝突による気候変動に耐えることができずに
激減することになった。

我々は電気エネルギーを使うことで、文明を発達させ、生存率を伸ばした。
電気エネルギーが無尽蔵ではないという事実を前に、我々がどうなるかは
明らかである。そのカタストロフィが今日明日、起こることはないが、
50年後、いや200年後、私達には変革が求められるのは自明なのである。

CO2削減のためにEVなどと悠長なことを言っている場合ではないのだ。
AIやビットコインなど、電気に依存した媒体に頼っている場合ではないのだ。

そういうものは、そういうものとして借受けて、ひとまずは利用しつつ、
オルタナティブな方法と、生活様式を模索する事が求められている。

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