意志決定の方法ー能動性ー [思考・志向・試行]

多くの人は意思決定を何気なくやっているのだろう。
それはある意味で正しいし、ある意味で間違っている。

意思決定に必要なのは、まずは情報だろう。どんなアクションがあり得るのか、
それを知らなければ、選択が生じない。人生において学校、就職、結婚、子供
家の購入、転職、起業など、さまざまな行動形式がある。だが、何を選ぶのか
は、実はそんなに簡単ではない。

個人的に思うことは、大抵の選択は自分の周りの人間に引きずられる事。
良く金持ちは金持ちでつるむというが、それは行動様式が似ていると
言うことだ。行動が近くなるのは、周りの他者を意識的か無意識的に真似する
からである。それをもっと言えば、文化となる。そしてそれが文化として
日常に染み込んでいる。身体に染み込んでいるわけだ。

だから、庶民は庶民の意思決定しか出来ない。例えば、とある土地がこれから
値上がる事がわかったとする。その値段が、1000万円で、手元に300万くらい
あるとしよう。金持ち思考であれば、銀行に頭金を担保で残りの700万円を
借りて土地を購入する。一方で、庶民思考では、いやいや負担が大きすぎて
やめとこうとなる。

その後、土地は予想通り値上がり3倍になる。つまり1000万円が3000万円に
なったわけだ。金持ちは、諸々の手続きを経たとしても、2000万円程度儲けた
事になる。こうして、庶民は300万円に毛が生えたくらいの利息を得て、
一方、金持ちは2000万円になった。この違いは何か?情報なんだろうか?

どちらにも似たような情報はあった。しかし、将来のリスクに対する考えが
違っていたわけだ。もし、3倍にならなかったら、どうだろう。下手したら
土地は値下がりしたかもしれない。堅実な庶民は成功もしないが、失敗も
しない選択を選んだ。一方、金持ちは万が一リスクにあっても、土地は売れば
良いと踏んだ。たとえ、二分の1になったとしても、500万円。借金が200万
残るとして、それくらいならという勘案だったのだろう。

結局、重要なのは、将来に対するリスクへの感覚になる。そしてそこに
ある程度賭ける事ができるかどうかが、金持ちになるかどうかを分けている。

さて、今、如何にもリスクを取らない方は失敗であるかのように記述した。
しかし、果たして実際的にはそうだろうか?

金持ちは、土地を購入してから、どんな気持ちだったか。どこかに不安感を
持っていたはずである。資産が減ってしまったらどうしようかと。それとも
そんな事を考えなくても良いだけの余裕があっただろうか。どちらにしても、
土地の事を気にかけるという心理的リソースはコストだったはずだ。

一方、庶民は何もしていない。そんな心理とは無縁の時間を過ごしたはずだ。
この2つを比べてみたら、どちらが不安状態を続けていたのかは明らかだ。
そして、そのような要素は無いほうが良いに決っている。

資産が増えるという事と、心の安寧を比べれば、果たしてどちらが良い
選択なのか、簡単ではない事に気がつく。金持ちが十分な資産があると
すれば、不安はない。一方、庶民は投資をすると精神に悪い。これが選択を
分けるし、選択の結果を変えてしまうわけだ。同じ情報があり、同じことが
出来るとしても、心のありようはまるで違ってしまう。


さて、意思決定の方法に何か指針はないものか。あらゆる状況に通じる
やり方などはあるまい。しかし、心に留め置く意志決定はあるはずだ。

一つには、人生の成功者はさきの話と同じことをいう。たとえば、
岡本太郎は「危険な方を選べ」という。やりたいと思うことがある。
でも、それは危険な気がする。実はそういうものこそが、本人の希望
だったりするのだと。多くの人は先と同じように実はチャンスが存在する。
だが、そこへ飛び込んでいく勇気がない。そこで勇気をだせというのが
成功した著名人たちの金言である。とはいえ、なかなか難しい。


もっと現実に即したものはあるのだろうか。
繁桝算男著「後悔しない意思決定」から5つの至言を紹介しよう。
1. 大事な問題は能動的に決める。
2. 確固とした目標をもて。
3. 己を知れ
4. 客観的に将来を見通す
5. 過去を振り返らない

である。

自分で決める事で、後悔は減らせる。じゃあ、それを実行するには?
必要なのは自分が何をしたいのかという大目標の設定だ。人生のミッションが
明確であれば、それに近づくために今何をしたらいいのかを考えられる。
選択肢の優先順位を見いだせる。また、自分を知ることは、どういう事を
重視するのか、金なのか体験なのか。それによってそこでの行動様式は
変化する。選んだらどうなるかを予測するには、希望的観測はだめだ。
ある程度、人の行動は他者と同じになる。だから、データや助言に耳を
方向け、客観的な予測をすることは大事である。最後に、決めたあとは
結果がどうであれば、振り返らない。あり得た別の選択を気にすることほど
時間の無駄はない。ときに感傷的な気分に浸るのはいいかもしれない。
けれど、それはもはや自分の人生に関係の無いことなのだ。

それと重要な点は、人生は長く、意思決定は1度ではないという事だ。
その時の選択には戻れないけれども、次に来る選択に備える事はできる。
先の選択時にどうしたのかを経験を活かすのである。それは個人の人生
の内でもあるし、他者への伝聞として役立つ事だろう。

意思決定の方法は、最終的に後悔の度合いを減らすことである。そして
もっと重要なのは、人生は今から未知なる将来に続いているという事だ。
目を向けるべきは、過去ではない。これからの人生において幸福を
増大させるには何をすべきか、それを模索する事が大事なのだろう。


最後にもう一つだけ。安富氏の意見を紹介しよう。そもそも、
二者択一のような選択が示されている事自体がマズイ事なのだと主張する。
どういう事か。

もしそれまでの人生を十全にいきてきていれば、どんな行動を取るかという
事について、その場で迷うことはないだろうと。そしてどっちらかにするか
というような自体になっているはずはないと。

確かに、何をしたいのか、自分には何が出来るのか、そういう事が明確に
なっているならば、目標が見えているならば、人生の意思決定は迷いでは
なく、決意になることだろう。そしてあとは決めた物事に真剣にトライす
れば良いのだ。迷いがあるということ自体が、自分への信頼の揺らぎに
なっているということなのだ。

とある男にプロポーズされた女の子がいるとする。この人との結婚を決める
かどうか迷っていると。おそらくその時点で、感情的な意思決定は終わって
いるのだ。すんなりと受け入れられないという事実が、その選択を否定
している。

だが、こうも考えてしまう。もしかしてここで受けなければ、次はないかも
しれないと。だったら、優しい彼氏だし、生活は安定しているし条件的に
申し分ないんだし、アリなんじゃないか。それに万が一だめなら離婚すれば
いいんじゃないか。

このように考えるのは、実は損得感情なのだ。プロポーズというものが
損か得かという次元のプロセスで処理されようとしている。それが故に、
この人でいいのかどうかと自問する。もちろん、生物としては生きる事は
重要である。その諸条件は有利な方がいい。当然だろう。

もし、この子がもっと打算的な価値観の持ち主なら、逆にとっとと、
プロポーズを受けている事だろう。このような時、大事なのは自分を
知ることなのだ。自分は生活そのものの安定という事をどういう風に
思っているのか。一方、自分は生活の安定に満足する人だと分かって
いれば、それを一義的なものとして決める事ができる。

そして、感情は継続しないということも覚えておこう。
どんなに怒っていても、どんなに悲しんでも、いずれ中庸に戻る。
恋という浮かれた感情を基準に行動したら、それはいずれ収まると
知っておく必要がある。収まったときに、どうなるのか、それを
客観的に把握して、決定するのが大事なのだ。

結婚とは、社会的なもの。それは愛情とは本質的に無関係である。
だから、結婚生活を有意義にしたければ、相手の感情がゼロに
なったり、自分の愛情がゼロになったりした時に、それでも、
うまく生活できるかどうかを考えることだ。同居人として許容
できるかどうか。そして、少しでもお互いに愛情があったら、
それは実にラッキーな事だと思ったらどうだろうか。

これを悪いところに目をつぶって、愛情があるから大丈夫とか、
金があるから、相手と相性が悪くても大丈夫など、そういう考えでは
生活は苦労することだろう。マイナスを補うのは、同じ土俵で考える
べきなのだ。

そして一番大事なのは、受けるにしても受けないにしても、自分で
決めること。そして、決めたあとは、振り返らない事だ。なぜか?

人は自分で決めたことに納得する傾向を持つ。また、人はものすごく
適応的である。だから、実は決定の内容はどちらでも、大丈夫なのだ。
むしろ、重要なのは決定のプロセスである。決定のプロセスが正常で
あれば、結果について人は受け入れられる。ここが一番重要な事だ。

また決定後に、自分で出来ることはまだ広々と残っている。相手とどう
うまくやるか。生活をどう組み立てるのか。普通の相手なら、大丈夫
である。選択の結果が必ずしも、決定的であることなど殆ど無い。

悩みはつきない。けれど、意思決定という大げさな状態に身を置く
ことはない。そうではなく、自分の価値観を信じて、自然な流れの
方向を見定めればいい。多少選択の間違えがあっても、行き着く先は
似たようなものになるのだろう。それは、目的地へのルートは一つ
ではないという事だ。

目的地を自分で能動的に創造する。それこそが、意思決定の要諦である。

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