安倍政権評価ー3つの柱??- [雑学]

2012年の年度末に現内閣が誕生してから、3年が経とうとしている。
そろそろ評価を考えても良い頃だろう。

彼らが打ち出した金融政策つまり金融緩和は大きな影響力を持った。
市場は円安に振れ、株価は増加した。そして企業収益は増大したかに見える。
輸出産業を主体に、景気の上向きを感じている部門も存在する。
一方で、多くの輸入企業、特に食品関連などでは原材料の高騰によって、
収益が圧迫され、在庫も切れてきており、いよいよ価格への転嫁が始まっている。
加えて、2014年4月より消費税が8%になり、これに便乗する形で多くの物品の
価格が上がった。こうして物価高への傾向が進んでいる。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS3102X_R30C14A3MM8000/

本来的にデフレ対策とは、簡潔にいえば皆の消費を盛んにするという事だ。
需要が増えれば生産も増える。すると企業も増産する。増産したものが売れれば
利益があがり、雇用者の給料も増加する。すると消費が増え、また需要が喚起
される。これに呼応して物価が上昇を始める。ゆるいインフレ状態をキープする
ことで経済を回すという事が可能となる。これが理想である。

だが、現実は異なる。そして大欠陥がある。現実では、円安に振れた
せいで原材料費の高騰があり、物価が上昇している中、消費税の導入が加わり、
人々は物価高を実感した。すると消費者は財布の口を堅くする。消費が落ち込み、
需要が減ると企業は投資を減らす。企業が儲からなければ、儲けを出すために、
コスト削減をする。てっとり早いのはリストラや正社員の雇い止めと派遣社員
の増員である。かつての不景気化でリストラは進んでしまったので、今回では
正社員の退職と非正規社員の増員が図られた。一見すると雇用者数が増えたかに
みえるが全体のコストは横ばいである。なぜなら正社員より派遣の方が給料を
抑えられるからだ。これが今日の貧困を招いている。

抑制された賃金では、なるべく出費を抑えようとする。重要視しない物品に
ついては安いもので済まそうとする。つまりデフレ傾向の促進である。そして
市場には安くてぼちぼちなものが並ぶようになる。これは製造業を圧迫する。
国産の高い物は売れない。そこで売れる単価に下げられるように、工場を海外
へ移転する事や、外国人労働者を雇う事を行うようになる。こうして、商品
価格の抑制と利潤の低下が引き起こされた。

利潤の低下が予測され、市場での消費が伸び悩むと企業は儲けた金を給料や
投資に回さなくなる。こうして2002年から2008年のGDP拡大にも関わらず
給料が増えないという事態が続いたのである。

加えて企業が儲けを出したがる他の要因は株価対策だ。四半期型決済が導入
されてから経営者は短期的な利益を追求するようになった。結果として長期
戦略が滞り、組織全体が疲弊するようになる。目先の利益が第一になりつつ
ある。いや既になっているのだろう。経営者の目は完全に収益にばかり釘付けに
なっている。

既に退職した人々の人口増加も問題に拍車をかける。生産せずに年金をもらう、
ないしは貯蓄や投資で財を稼ぐ人々だ。寿命が延びたために、死ぬまでの期間の
生活対策が必要である。経済が停滞しているために、子供が減り、将来的な
年金の安定供給が危ぶまれている。いや正確にいえば、このような事体になる
事は明白であったが、それらを施政者たちは無視してきたのであって、この問題は
かつての施政者たち、そして高齢者自身の怠慢であると言えるのだが、その
付けをこれからの子どもたちが支払う事になった。

こうしてみると現状の問題点は明らかになる。
一つは、需要である。人々は給料が安定的な給料増加があると信じられないために、
消費行動は抑制される。これが供給をストップさせる。供給しないのであれば、
どうにかして利潤を出さないと現在の給与体系が保持出来ないため、企業は正社員を
減らし、非正規を増やすなど、後ろ向きな利潤追求を図ろうとする。加えて、内部留保の
資金を株式など財テクに回すなどを行う。このような事をしても尚、利潤が出ない時、
企業はつぶれる事になる。大企業は簡単につぶせない。そして業績悪化を表に出せない。
それが現在のシャープや東芝につながるのは明白である。

二つ目は人口減少である。GDPは人が減れば当然少なくなる。消費も落ち込む。
そして生産人口の相対的減少がそれに拍車をかける。経済は膨らめば、いずれ縮む。
現在はその縮むフェーズにいるという事である。人口減少は将来的な資源確保の困難さと
相関する。つまり経済の停滞は人口減少を招く。

一と二が相まって、一人あたりの儲けが減っている。これが現状の問題である。
当然、収益がさがれば給与が減るのが当たり前である。だが、そこに抗う人々もいる。
つまり給与体系をなかなか変更しないないしは出来ないために、若者が割を食う。
就職が厳しい状態が続いているのは、そのせいである。経済が収縮傾向にある時、
全員の給料を減らさないのであれば、若者らの給与が不当に下げられる事になる。
もしくは雇用を控えたりする。こうして若者の勤労問題も生まれる。加えて、仕事を
与えないために消費者が減る事につながり、経済も停滞する。

若者の勤労問題は人口問題の原因でもあり結果でもある。加えて、需要低下を招く
要因でもある。現代の若者は仕方がないので、非正規や派遣につくことになる。
あからさまな差別が行われつつある。それは世代間における差別である。そして
実際の能力差でないことは明らかである。

この背後には社会思想も影響している。かつてはお見合いで結婚していた。
だが現在は、恋愛を主体とすることが是とされている。恋愛は万人に与えられた
機会でも能力でもない。外見上の差別もある。ここに人口問題における新たなハードル
が生まれたのだ。

自由という名の元に、多くの若者が自己責任と言われてしまうが、
本当の理由は社会問題である。人はそれほど変化しない。ならば問題があるのは、
社会の方であって人はその拘束条件下で合理的に運動するだけなのだ。

ではここから現代の政策を考えよう。問題は大きくふたつ。需要の問題と
人口問題であった。人口問題は結局需要の問題であるために、経済的な観点で
言えば需要問題に絞ろう。現政権はこの需要をどう喚起しようとしているのかが
評価の対象である。

アベノミクスとは名ばかりが流通してしまっているが、
その実態とは古典的な経済対策である。特に大きな影響を持つのが金融緩和である。
一つ目の柱として、彼らは市中へのマネタリーベース拡大を図った。日銀が市中銀行へと
供給する資金の事である。これは135兆円であったものが、300兆円を超えるほどに
増加した。具体的には銀行が抱えている国債を日銀が買い取り、資金を提供する。
これによって、マネーストックが68兆円増えた。よって市中に回る金が増えたことになる。
これは銀行の貸付によって行われるもので、投資に利用されるとみられている。
http://thepage.jp/detail/20150512-00000004-wordleaf

記事にもあるように、マネタリーベースは150兆ほど増えて、実際に市中へ
68兆円が出回った。これをどう評価するかだ。実際にこの金が増えた事で、
投資が増えた案件もあるだろう、だが増える投資以上に銀行に金があぶれている。
加えて、これは貨幣が出回る事で円安を誘導する。68兆円ほどの投資が生まれたのは
ここでの成果となるわけだが、この政策では、需要への効果は未知である。
つまりこの対策は需要ではなく、サプライ側への対策であって、ここでは評価対象外である。

第二の柱として、政府は財政出動を行っている。つまり公共事業だ。
端的に言えば、土建である。道路や橋といったインフラ整備に金を出している。
これが行われる理由は、本質的な道路や橋の改修ということ以外に、景気誘導でもある。
愚かな施政者たちの主張によれば彼らにお金が落ちれば、そこからトリクルダウンとして
消費が回るというおとぎ話が流布されている。この影響は彼らの身の回りのごく一部
であるし、もしこの論理を正しいと仮定するならば、投資先は土建でなくても良い。
もっと効率的に効果のある財政出動先がある可能性には目向けていない。

現政権は補正予算を打ち出しており、そこから公共投資が行われる。土建屋などに金を
出す際には、銀行が間に立つ。土建屋は入札によるが実際には、実際の仕事は子請け、
孫請けが行うのが通例だ。その際に額面はさがってゆく。加えて、保険の仕組みもある。
信用保証会社による保証がなければ、土建屋は工事を受注出来ない。このため、保険料が
工事費に上乗せされる事になる。仕組み的に、公共事業の名前とは裏腹に、余計な部門が
儲かる仕組みが存在している。つまり、公共事業における入札は無駄な経費が多いのが
特徴なのだ。公共事業という名前を変更すべきだろう。

ともかくも財政出動によりいささかの景気刺激効果があるかもしれないが、
彼らが金をため込めばそれまでである。これでは国が一部の人間のために借金を使って、
仕事を配っているようなものである。保護政策とでも呼べるだろう。票田に対する恩義
があたかも全体のためになるかのような説明にはウンザリする。

道路や橋が出来た所で、我々の懐は膨らまない。なぜならそれは商品として出回るもの
ではないからだ。もちろん、それらインフラは重要であるが、これが景気対策として
一つの柱になりえないのは見てきたとおりである。つまり、ここでも需要喚起がされない。
よって、評価対象外である。

第3の柱では、民間投資を喚起する成長戦略となっている。では具体的に何をしているのか?
日本産業復興プラン、戦略市場創造プラン、国際展開戦略の大きく3つをする。

日本産業復興プランでは、正直なところ各論すぎて内容を列挙する気にならない。
具体性に乏しいものがずらずらと並んでいる。紋切型で企業に投資をさせるとか、
イノベーションを推進するだの名目的なものばかりである。その中で我々に関係ありそう
なのは、雇用対策だろう。雇用の流動化が上げられている。だが雇用が流動化したからと
いって、我々の給料は上がらない。むしろ、転職による生涯賃金の低下の方が問題だろう。
つまり雇用の流動性は需要を喚起しない。また特区を作るという思想は「新たなる利権」
の匂いがぷんぷんとする。

戦略市場創造プランの中では、健康寿命の延伸、クリーンエネルギーの実現、
インテリジェンスなインフラ、地域資源で稼ぐ地域社会の実現、があげられている。
これらもほとんどが名目ばかりである。特にクリーンエネルギーなどいっているが、
原発と相容れない。ともかくの具体性に乏しい。

国際展開戦略では、グローバル化をうたっている。グローバル経済を行う。つまり、
TPPの妥結などだ。海外市場の開拓、人材育成などである。これらを政策として行う
つもりなのだろう。

全般に言える事は、これらは行政政策であって、経済政策そのものではない。
つまり第三の柱は、経済に関連する事柄への目標値設定のようなものだ。
具体的には各省庁や関連企業などらが補助金などをもらって実行するのだろう。
では、これらは有効需要を喚起するのか?否。つまりこれも検討対象外である。

つまりアベノミクスは結局のところ、肝心要の需要喚起に失敗しているのだ。
そして、やる事は自民党そのものであり、土建屋に金を配ったり、銀行に金を
配ったりと既得権益者への利益享受である。これらを大衆が嫌ったから、
自民党から民主党に政権が移ったはずであったのだが、まったく逆行してしまった。

現在、地方創生という御旗の元、プレミアム商品券が配られている。
消費喚起のための政策だ。1万円で1万2千円程度の買い物ができる。
これを手に入れようと様々な所が争いが起ったりした。現在は収束している。
この政策に関しては、少なからず需要を喚起する点において評価できる。だが、
問題がおおありだ。まず、商品券は全ての人が買える者ではない。抽選にもれた人、
買えなかった人も数多い。この機会が不均等な点がまず問題である。続いて、この
プレミアムを作っているのは税金である。よって、特定の誰かにだけ税金を還付
している事と同じである。これは果たして公平だろうか?加えて、非常に貧乏な人
にとっては、一口1万円という額ですら、捻出が難しい。本来ならば、一番欲しがる
最下層の経済状況にあえぐ人々は、この恩恵にありつきようがない。よって、この
政策は全くもって不平等であり、許容されるものではない。なぜ私の税金を誰かが
勝手に使って良いのか。抽選で運が良かったから?全く理解不能だ。


総括しよう。アベノミクス、それは無駄な政策である。
それは上記のように、問題が需要にあるにも関わらず、ほとんどの政策は需要喚起へ
直接つながらない事ばかりを行い、サプライ側を刺激する事を行っているからだ。
これはおそらく既得権益の複合体はこの方式でしか利益を得る事が出来ないという事実に
基く。つまり、現政権は国民の事など考えておらず、自分たちの利益のための運営を
しているという事だ。これを是とする人々は、この対策の一環である金融緩和等において
利益を得る人々、つまり金融関連もしくは大量の株を持つ大企業などだけである。
彼等はこれをトリクルダウンなどというおとぎ話で正当化しようとする。

庶民においてはこの政策はほとんど逆効果である。なぜならば需要を喚起させないからだ。
この明白な事実がわかっていながら、御用経済学者は尚も逆の事をやり続ける。

本気で需要を喚起したいのなら、減税するのが通りである。
つまり、一人あたりの給与を増やす事だ。この当たり前がなぜか採用されない。
トリクルダウンが成り立つならば、その逆が成り立つだろう。つまり減税して
皆が金を持てば、そのおこぼれを企業が拾うだろうと。貧乏人に金を配る根拠も
またトリクルダウンと同じである。


これが続くというどうなるかという話がある。現在のように金融緩和を続けると
市中の金が増える。銀行や増えた余分な「死金」は金利の高い商品を買おうとするだろう。
つまり高効率な投資財への資産投下である。これは俗にバブルと呼ばれる。需要を喚起せず
に金だけあると儲けられる場所を巡って投資合戦が行われる。市場では投資が投資を呼ぶ。
儲かりそうなネタが出てきたとき、気をつけなければならない。例えば、オリンピックで
ある。既に不動産の高騰が始まった。市中にある金は、これら不動産に流れてゆくだろう。
その結果として、マンション価格は高騰するかもしれない。一部の景気のよい富裕層が
それを投資目的で買う。これが引き金になって、都心の土地価格上昇が起こるかもしれない。
それが2020年後に終焉を迎える。過剰な投資を行った銀行は焦げ付いた債権を手に政府に
訴える。公的基金を損失補てんに充ててくれと。こんな馬鹿げた話もフィクションに
終わらないのである。結局、金融緩和によるサプライ側の過剰供給はバブルを招く。そして
そのつけが長期にわたる不景気である。かつてそれを味わった日本。デフレの状態で苦しん
だのは誰のせいだったのか。きちんと理解するべきだろう。

最後にドイツの高官の話を。
http://jp.wsj.com/articles/SB11581577432647144308704580585261313819770

結局、経済は地道にやるしかないのだと思う。あべのみくす?とんだ茶番である。


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