仮想通貨の在り様ーその可能性ー [その他]

ビットコインやアルトコインなど、仮想通貨が現在流行している。
時に、ビットコインは1BTCが200万円に達しようとしている。

もともとは、コンピュータの中で定義された情報に過ぎない。
その情報にどんな価格を与えるかは、市場によって決まる。これが常識だ。
よって、仮想通貨は文字通り、仮想通貨であり、それ以上でもそれ以下でもない。

ナカモト・サトシというペンネームで書かれた論文が、
ビットコインのコアを説明している。ブロックチェーンと呼ばれる仕組みは、
分散型台帳システムにより、取引の総体を常に複数人、複数個所でチェック
しながら取引を記述し続ける点に特徴がある。

https://tech-camp.in/note/technology/28766/

ビットコインの主な特徴は、発行体がいない事、
紙幣貨幣など実物がない事、発行量に上限がある事、世界中で使える事、
価格変動は今のところ、大きい事などが挙げられる。

簡単に考えるならゲームの中のゴールドやグループ店舗で使われる
ポイントと大差ない。ただ、その情報の在り方が高度な数学を含み、
その改ざんを防ぐ技術の高さから、法定通貨の代替となる可能性を秘めている。

もしビットコインで給料をもらったとしても、クレジットカードのように
処理できるとしたら、多くの普通の人にとっては気にならないはずだ。
円と呼ばれないだけであろう。

法定通貨は、中央銀行による発行が行われている。
また実体を持つ。加えて発行量に上限がなく、価格変動はごくわずかだ。
使える場所は、主に国内のみである。

現状でこれらの大きな違いは、価格の変動性だろう。価格変動が大きいものは、
投機的な扱いを受ける。かつてのオランダのチューリップや、土地ころがしと
同じである。為替の変動はごくわずかだが、仮想通貨はとにかく変動が激しい。

そもそも、金とは何か。それは信用の事であった。信用ってなんだ?と
多くの人は思うだろう。それは要するに「将来の誰かの労働」の事である。
金が手元にあるということは、将来その金の額面分の労働を用いる権利と
いうことだ。5000万円あれば、それは家を建てるのに十分な労働を手に
している事となる。

しかしその裏付けは金が債権であるという点においてスタートしていた。
金とは債権である。誰かが借金しなければ、金は存在しえない。その意味で
仮想通貨は金のようで金ではない。また借金は人口が増えたらその額が増加
するものであるが、仮想通貨では上限がある。この辺りもリアルマネーとは
一線を画している。

仮想通貨がマネーになり得るか。現在のところ、金に代替するのは難しいだろう。
仮想通貨の増加の仕方は「信用創造」ではなく、マイニングによるものだからだ。
マイニングとは、ブロックを計算するための行為で、それを行うと報酬が
もらえる仕組みだ。よって、仮想通貨を手に入れる手段は、誰かがもつBTCを
リアルマネーによって手に入れるか、マイニングをしてその報酬として手に
入れるかとなる。リアルマネーは誰かが借金すればいい。これは大きな違いだ。

では仮想通貨が役立たないかと言えば、そんなことはないだろう。
改ざん不能性をもつことから取引の安全性などにおいて有効であるし、
世界中で使えることから、両替の不要さなどの利便性もある。

また、もっと重要な事は管理者不在という点である。中央銀行のような
存在によるものではない点をデメリットという人がいるが、それは大きな間違えだ。
金の信用とは実態にあるわけではない。大事な事なので繰り返すが、金の信用とは
国の保証などではない。それは人々の頭の中の強い幻想の事を指す。

つまり、目の前にひらひらさせている紙を金だといいはる人がいて、それを
みた人が、ああ金だと思えば、それで金となるのである。そこに国の存在性は
不要である。これが実態としての金だ。もちろん制度としての金は中央銀行に
よる発行という保証の元にある。だが、実体など使用者にとってはどうでもいい
事ではないか。

よって、信用を体現するものならば、金として有効に機能するはずなのだ。
ただし、先ほども述べた通り、現在の金の代替になるかといえば、ならない。
もう少し言えば、取引の決済手段としての仮想通貨はあり得るが、仮想通貨が
現代の金の機能全体を体現する事はあり得ないと言えるだろう。包含関係として
仮想通貨の方が機能性が小さいのである。

つまり「仮想通貨には信用創造がない」事が最大のネックである。

現在、取引が過熱しているが、その実態を比喩で考えてみよう。
例えば、芸術家の絵がある。芸術家が歳をとってゆくと、作品数が減り、
将来的には死んでしまうため、作品の制作が終わるとしよう。彼の絵は、
最終的に2100万点あるとしよう。

この時、絵を欲しいという人が現れるとする。はじめは物好きだけが絵を買った。
だが、次第に欲しいという人が増えてゆく。すると、どこかで相が転移して、
指数関数的に値段があがってゆく。あまりに作品点数が多いので、この作品の
やり取りをもって、金の代わりをする人が現れる。作品1つで、車一台と
交換するようなものだ。

多くの人がこの作品を欲しがっている時は、このような交換が成り立つ。
だが、みんなが欲しがらなくなると、価格は崩壊する事だろう。誰もが
欲しがる時のみ、金として機能するのである。

誰かが、作品を借金させてくれと言ってきたとする。現物がある人は
作品を返すための念書を書いて、貸してくれるかもしれない。だが、
利子をつけて返すにはどうしたらいいのだろう?作品の値上がりをもって、
作品で作品を買う??作品1つで、作品を2つ得る事が可能でなければ、
利子は得られないだろう。

これが仮想通貨ビットコインが金の代替にならない理由である。
有限な金のようなものは、リアルマネーの性質をイミテーション出来ないのだ。

もちろん、考え方をかえる事も出来る。リアルマネーの方が異常という
認識において、仮想通貨の性質をもって金とする方法である。

よく考えてみれば、なぜリアルマネーは利子がとれるのか。なぜ100円で
200円を買う事が可能なのか。ここのカネの矛盾がある。つまり信用創造
いや、債券創造があるのだ。

銀行は金を創る。本来は手元にない金を貸す能力を国から担保されている。
もしくは、その詐欺を見逃すように国と交渉しているともいえる。だから、
誰かが住宅ローンを組みたいとして、そこに返済の能力をみこめば、金を
貸すことになる。なぜなら、金を創ればいいのだから。これは公然と知られた
事実である。

もし私が、手元に何もなくても、誰かに100億円貸せるとしたら?
そんな馬鹿な!と誰しもがいうだろう。だが、銀行はそれをしている。
事実、それをしているのである。誰かが借金をすれば、その分金が増える。
だから、利子を払えるのである。これがリアルマネーの本質である。単に
決済出来ることが金の存在目的ではないのだ。

仮想通貨が、そのまま仮想なのは、この信用創造による金の膨張が存在しないからだ。
むろん、ビットコインを始めた人間はそんなこと百も承知だろう。
そして、現代のリアルマネーの特徴に異を唱えているのかもしれない。

さてさて、投機的な金がビットコインに流れている。まだまだその交換価値は
増加する事だろう。だが、仮想通貨が決済にだけ用いられるとしたら、
リアルマネーにとって代わられることはない。むしろ共存関係になることだろう。
大口の取引で、世界をまたぐときの決済などに積極的に使われるかもしれない。

逆に、ビットコインに使われているブロックチェーンの方式は、もっと
人々の生活に食い込むに違いない。私が可能性を感じているのは、地域通貨
としての仮想通貨である。シルビオ・ゲゼルの減価する貨幣としての利用である。

ブロックチェーンを地域通貨として利用する事で、自動的に減価出来る。
そして、発行数も管理できる。このようなブロックチェーンを用いた地域通貨
パッケージを市町村に提供できれば、かなり有効な景気刺激策になるだろう。

加えてもっといえば、個人通貨の可能性もある。誰かの労働をコインに変換し、
市場で交換するのだ。正確には逆で、個人の労働価値を個人の通貨で表すと
いうこと。例えば1鈴木が、パン一つ。でも、人によって労働価値が異なれば、
2田中がパン一つかもしれない。個人の信用をはかる手段としての通貨も
あり得る。この類似系はVALUというサービスとしてもう存在しており、
いずれ表舞台に現れるのかもしれない。

いずれにせよ、21世紀では通貨の概念は拡張してゆくことは間違えない。
その時、現在の仮想通貨がそのまま利用されているとは考えにくいだろう。
拡張された形に変形していると私は予測する。

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コメント 3

Met

初めまして!

他の記事も読み、特に経済構造関係の記事が大変興味深かったのでコメントさせて頂きます。

私は仮想通貨には(投機ではなく思想的な意味で)幾分詳しく、特に「ビットコイン」とその他の仮想通貨との間にある違いについて普段からよく考察している者です。

こちらの記事に、「仮想通貨には信用創造がない」事が最大のネックとありますが、その通りだと思います。
そして、「ビットコイン」については、それが一番の特徴であると考えます。

ビットコインというものはよくゴールドに例えられます。
つまり、「金本位制から変動相場制に移行する前」の状態を保ちながら、かつ国境なく取引ができるという特徴を持っているということです。

この点をふまえて、どのようにお考えになるか、お聞きしてみたくコメントいたしました。

例えば、マイニングをするためには初期投資が必要です。
これは、ビットコインを成立させるための「精神的な借金」と見做すことができると思います。

また、ビットコインには採掘難易度調整という面白い仕組みがあり、沢山の人が欲しがってマイニングする時には設備投資(計算力=電力)が膨らみ、価値が下がって誰も欲しがらない時には必要な計算力が小さくなります。

つまり、政府でいう造幣・徴収のコントロールを使用者合意のプログラムが担っているという点です。

私はこの特徴が、そして最初のマイニングシステムである「ビットコイン」が担う役割は現在の経済システムよりも、もう少し大きなものだと考えています。
by Met (2019-01-12 14:25) 

Met

↑ ×政府 ○日銀

D-Blueさんのこのブログにはつい先ほど訪問したばかりでして、他の記事もこれから色々と読ませて頂きたいと思っております。楽しみです。

また、お時間あるときにお返事頂ければ面白い議論ができるような気がしています。

by Met (2019-01-12 14:32) 

D-Blue

コメント有難うございます。

そうですね、ビットコインはうまく金を模倣していると思います。
みんながコインだと思ってくれる間は交換財として利用され続ける
のかなと。

現状ではビットコインも、一般的な通貨に裏打ちされた金に
なっていて、この交換性が成り立つ事がビットコインの財として
信用を担保しています。

ビットコインの信用度が中央銀行券の信用度を上回る事があった
としたら、また話が変わってくるのではないかと思います。

by D-Blue (2019-01-14 20:26) 

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