アメリカの国家犯罪全書

ウィリアム・ブルムの著作「アメリカの国家犯罪全書」を読んだので簡単にレビューを。

アメリカという国は、自由の国という象徴がなされているが、実際には
軍事帝国であり、多くのリソースを軍が握っている。政治家は軍関係者から
資金をもらい、彼らに有利な政策を推進する。これが資本主義の成れ果てである。

一度でも、儲かった分野つまり国からの投資に成功した分野は、
二度目からはロビー活動という資金バラマキによって利益誘導が可能となる。
この恩恵を軍需複合体はたぶんに受けているわけだ。

さて本書をよむと、間違えなくアメリカ嫌いになれる。少なくともアメリカの上層部は
全く信用ならないと思わされる。記述が全て真でない可能性を差し引いても、アメリカの
上層部が行ってきた実際の行いをみれば、アメリカが腐っていると認める他ないだろう。

内容はもっぱら、軍需複合体がいかに他国へ侵攻していったかという話がメインである。
特にCIAが行った他国を謀略へと導くやり方は、この上なく欺瞞に満ちている。組織とは
かくも恐ろしいものかと改めて認識せざるを得ない。

日本に落とされた原爆。これは本土決戦を避けるという意味で人道的であったと解釈される
事があるが、それは彼らの大義名分である。実の所、日本は敗戦前に数ヶ月に渡って降伏
しようとしていた。それをアメリカが拒否していたのである。原爆はもっぱらソ連への牽制
の意であった。つまり冷戦への号砲だったのである。
この事実だけみても、アメリカという国の外交政策が如何に巧みで、残虐かわかる。

アメリカの外交政策は4つの原理で動いていると本書は主張する。
1、グローバル化を求める。その訳はアメリカ資本の多国籍企業に対して世界を解放する事。
2、アメリカ議会の議員やホワイトハウスの住人に資金を提供する防衛関係企業の利益増大。
3、資本主義モデルに代わる代替の社会制度の誕生を阻止すること。
4、地上の出来るだけ広範囲にわたって、政治的・経済的・軍事的覇権を確立し、
アメリカに対抗出来る勢力を阻止し、アメリカの考えに従った秩序を作る事。

この原理から導き出されるのは、アメリカが引き起こす戦争は全て、経済的理由が存在し、
そのために政治を利用するという事である。ベトナムやユーゴスラビアなど、様々な国が
このアメリカの自己拡大の犠牲になった。それはイラクなども例外ではない。CIAは他国に
おいて社会主義乃至は共産主義的社会がある時、その内部に内乱を起こさせる為、武装グループに
資金援助したり、軍活動を指導までする。そうして、他国が恰も内戦状態担った所で、アメリカの
部隊がその沈静化という大義名分によって攻撃をしかけるのである。これは国家的犯罪であろう。
このような所業に対して、イスラム原理主義が強い抵抗を行うのはある意味で当然の帰結である。
詳しい所業はぜひ本書を読んで頂きたい。

テロリズムの定義はFBIによると「政府や一般市民あるいはその一部を脅迫したり強制すること
により、政治的あるいは社会的な目的を達成するために個人や財産に対して加えられる、外国
の勢力と関係をもつ、あるいは国境を超えて活動している集団や個人による、不法な武力あるいは
暴力の行使」となっている。これはアメリカの軍事行動そのものではないか?つまりアメリカは
国際テロリズム国家と呼べるのである。

このような武力による不信を世界中にばら撒いたせいで、アメリカが報復テロを恐れる事となった。
それが我々にも影響する。飛行機に乗る為の過剰なまでの検査や、事前登録のESTAなどは、まさに
そのためにあるわけだ。

アメリカを世界の警察だとか勝手な解釈をしているのう天気なのは日本人くらいなものである。
我々の生活はアメリカナイズされ、近年はそれが薄まるどころか益々冗長している。アメリカの
生活を羨ましいと思う日本人は多い。だが、それも彼らの宣伝によるものであり、決して現実
ではない。実際にアメリカにいけば、そのあまりの階層社会にうんざりするだろう。日本人は、
アメリカではマイノリティであり差別対象である。

アメリカ国内の生活においても、彼らはビックブラザーもびっくりなくらいに監視されている。
アメリカにはもはや自由は無くなってきているのである。これも気になるなら本書を。
日本も例外ではない。日本のやり方は数年遅れのアメリカである。いずれ日本にも強力な
情報管理網がしかれ、我々の言動はつねに監視の対象となる。そうした時に、悪事とはどう
定義されるだろうか。少しでも危険なキーワードをメールで打ったりすると、直ぐに警察に
呼ばれるかもしれない。そういう社会が迫っているというのは唯の空想ではないのだ。

アメリカは余りにも力を持ち過ぎた。少なくともアメリカ上層部には、世界を騒がすだけの
権力や資金がある。この状態を良しとはやはり言えないだろう。世界各国において、この資本主義
経済圏の拡張に反対が起こる事は明らかであり、今後もその接点において争いが起こるだろう。
それは決して自然現象ではない。アメリカ連中のエゴがそうさせているのである。

我々はそろそろこの世界をフラットに捉えるべきだ。日本という国から見える世界の景色は
実の色をみせてはくれない。あらゆる懐疑を行う事がこれから重要となる。安易に国の言明を
信じてはならない。とりわけアメリカの外交政策に対しては常にその裏の真意を探らなくては
ならないのだ。テロとの戦争?ちゃんちゃらおかしいのである。それを我々は意識しなければ
彼らのなすがままになってしまう。その危険性をここで訴えたかったのである。

一節に面白い事が書いてあった。権力が腐敗し非人間化しているわけだが、
実をいえば、無用に残酷で無慈悲で非人道的になれる人間しか権力を持ち得ないと示唆されていた。
確かに、企業の社長しかり、日本の行政しかり、権力に絡む人間は人間的な共感や理解が不能に
見える。なるほど、権力者とは人間として異常性を持ち合わせているのだろう。

そういう意味で世界をながめれば、出世して偉くなるとは、とどのつまり人間をやめるに
等しいのかもしれない。そういう矛盾を抱えた存在でしか権力を振り回せないということなのだ。
可哀想な人々。だがその可哀想な人々が世界に絶対的に害をなしているという事実から
我々は目を反らしてはいけないのだ。
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