外部性と内部性ー脳と外界ー [思考・志向・試行]

脳における外部とは、五感を通じてセンシングできる何かである。
少なくとも、そのようにして知覚した何かである。
そして、知覚とは脳内にある種の反応性を引き起こすことである。

よって、脳内になんらかの反応性を引き起こしさえすれば、
それはあたかも実在するかのような「知覚」を生み出すことだろう。

逆に言えば、真なる外部というものは常にカッコ付きになる。
我々は真なる外部に触れることは絶対的に出来ないと言っても良い。
この場合の我々とは脳の内部に存在する電気化学的反応の意味である。

さて、そのように外界を捉えたとしたら、内部とはなんだろうか?
素朴な感覚からいえば、内部とはまさに自分が自分を知覚している
状態を指し示す。自分の状態把握そのものが内部を「見つける」のだ。

だが、考えてみてほしい。上記のことは相当におかしなことだ。
自分が自分を見つけるとはどういったことだろう?
つまり、上記にあげた考え方では、自分というものがどこかさらに
別にいて、その実態が自己内部を観察している状態という解釈になる。
これが俗にいう心脳問題である。

さて、外部と内部の接続を考えてみよう。
外部とは、とどのつまり「内部」のことであった。
そしてその内部とは、自己による自己知覚のことであった。
つまり、この場合の外部を内部へと代入すると
「内部」の自己知覚が内部ということになる。
これは単なる言葉の矛盾であろうか?

整理して考えよう。外部と我々が呼ぶべきものは、すでに「内部」である。
一方で、我々が素朴に内部と呼ぶものは「自己による自己知覚」そのものである。
すると、我々は常に外部そのものを知覚する存在であり、その機能自体を
自己と呼ぶことになる。

物理的世界という幻想的概念を真であると仮定して、(むろん嘘かも知れない)世界
の投影を脳の内部に保持する。その保持された外部を脳機能が知覚をするという図式
である。

ここに実体論を持ち込むと、果たして人は矛盾を内包することになる。
脳の中に存在する外部を知覚する本体はなんなのだと。これはホムンクルスと
呼ばれる存在と同義である。だが果たしてホムンクルスなど必要だろうか?

我々は目が覚めると同時に世界を知覚する。このこと自体が我々の在り方であって、
それ以上でもそれ以下でもない。つまり、外部世界を内部に取り込み、その内部
情報の海を探索する存在=自己であると言えるだろう。その機能性そのものが
我々の自己である。

はっきりいって、人類は相変わらず自己中心史観から逃れていない。
それは自己の在り方についても同様である。何か特別であると信じ込んでいるのだ。
だからこそ、自己が単なる脳という物理的実体の機能の一部であるということを
受け入れないだけなのである。その意味で、本質的に我々は心身一元論を採用する
ことが現代人のコモンセンスとなるべきだと主張したい。

さて、翻って、外界とはなんだったのか?
脳内における外部を知覚することそのものが自己の在り方だとすると、
その内部とは外部でもある。つまり自己とは外部の投影を基に出来上がっている
と言えるだろう。極限的に言えば、外部とは自己そのものである。

世界は自己であって、自己は世界なのだ。

そもそも外部と内部を規定すること自体が幻想であった。
外部性とは改めて自己が作り出した幻なのだ。
これも詰めていけば、外部を作り出すといういい方が可能であろう。

外部を作り出すのが自己と呼ばれる脳機能の役割なのである。
この機能性が崩れたとき、人は精神的な異常をきたすのである。

我々は日々、外部を生み出しているのである。
これは世界が本質的に物理的世界であるということとは違う。
そのような物理的世界があるということはここでは一端認めよう。
その上でなお、我々は外部を生み出す。それも自己の内部に生み出すのである。

そのように生み出した外部が存在する限りにおいて、我々は「自己」を規定できる。
つまり、外部を規定するのが自己なのだ。不思議なことに自己という機能は、
自己の存在性を自ら決めるようにできているようだ。自己の機能性自体が外部を
生み出すことで、自己自体を規定するのである。

物事の多くは表と裏がある。この表と裏の在り方そのものがまさしく「自己と世界」
なのである。どちらかが別々に存在するわけではない。すべては連続してつながっている。
そのつながりの中にバウンダリーを形成することが自己の機能性なのである。
我々はたまたま、そのように作用する神経細胞を作り出してしまったのだ。

連続する世界に切れ目をいれること。この機能性の体現者こそが自己であり、
自己は切れ目をいれたからこそ、自己として存在できるのである。
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