サッカーの進化ーユーロより [雑学]

サッカーの在り方がだいぶ変わってきた。

イタリアvsスペインとイタリアvsクロアチアを観た。
この試合のどちらにも言えることだが、個人の能力に頼るサッカーは
終焉を迎えつつあるということだ。

明らかにスペインのサッカーが現代サッカーといって良いと思う。
パスをつないで、人込みを切り裂いていくサッカーである。
そこには、一人の個人的な能力よりも、複数人の協力によるパス回しが
より重要になる。むろん、個々人のレベルも十分に高い。

かつてのサッカーは、個人能力の高いFWがいて、
そのFWに如何にうまくボールを持ってもらえるかが勝負だった。
少なくとも、ゴール前で、DFと一対一になれば、抜き去ってシュートが出来る、
そういうFWを使うことがサッカーにおける得点力となっていた。

とはいえ、さすがのFWも複数人相手では、突破が難しい。
せいぜいの例外は、バルサのメッシ
すると、その一歩手前のパサーがどうやってFWに渡すかが問題である。
これがファンタジスタを生み出す原動力だったのだろう。
ピンポイントで、うまくFWにパスをだせれば、そこからFWが点をあげてくれるからだ。

イタリアのサッカーにおけるピルロがまさにこの役回りだ。
うまいパスが送れるには、ボールをもって前を向く必要がある。
そのためには、ボールキープ力も重要になり、高度なテクニックと高いパス精度が
要求されることとなった。ボールコントロールが抜群のMFが重要だったのだ。
つまりはファンタジスタである。MFのスター選手とはこのような能力を持つ。

現在も多くのチームがこの方式によってゲームを組み立てている。
それは逆説的に言えば、この方式の対応策も生まれてくるわけだ。

一つには、FWに複数で当たること。
もう一つには、MFを自由にさせないこと。

これには、集団で引いて、彼らを自由にさせないことが重要なポイントである。
彼らを孤立させれば、決定的なシーンをかなり減らすことが出来る。あとは確率の問題となる。
圧倒的なストライカーが減った理由は、ゴール前のDFの駆け引きがうまくなったからだ
と言えよう。

カテナチオと言われたイタリアサッカー。
その神髄は、深く守ってカウンターをしかけるという戦術であった。
これは上記のストライカー+パサーという組み合わせを考えた時、
もっとも効率が良い戦略の一つと言える。

ディフェンダーが跳ね返したボールをパサーが預かり、そこから、
前線のフォワードへピンポイントでボールをつなげば、あとはFWが一人抜き去り、
シュートすればよかったのだ。

新生イタリアサッカーは、これを少し修正した。
なぜなら一人のFWではさすがに点が取れなくなったからだ。
そこで、FWに相当する人を増やせばよいと考えた。

これをするには、人を前に送る必要がある。
すると、守備の人間を減らすしかない。つまりカテナチオでは立ち行かない。
そこでバックスを3人にした。そして薄手になるディフェンスを補うために、
前線からのプレスを使った。つまりボールを奪う位置を自陣のゴールエリア付近から、
センターへと移動することにしたのだ。

こうして、中盤付近でボールを奪取したイタリアは、ピルロ、つまりパサーが
ボールを持つと、攻撃態勢をとって、複数人が上がる仕組みにしたのである。
これが新生イタリアだ。逆にいえば、ピルロがつぶされると、イタリアサッカーの
攻撃は途端に半減するだろう。

バロテッリは研究されているせいか、個人の能力が高すぎるせいか、
得点するための工夫が足りない。彼が不発に終わっているのは、ゴールまで
一人もしくは二人を抜く部分を重視しないせいである。おそらくイタリアは
グループを突破しても勝ち抜けないだろう。

ある意味では、優秀なFWとMFがいるがために、全く新しい戦術をとることが
難しいのかもしれない。

さて、逆にスペインやクロアチアのサッカーはどうだろうか。
スペインにはイニエスタという優秀なMFがいる。
クロアチアには、モドリッチというMFがいる。
一方で、FWはどうだろうか?
スペインならフェルンドトーレスがいるし、クロアチアにはマンジュキッチがいる。

だが、そこに集中的にボールをパサーからボールを集めようとしているかといえば、
異なって見えるだろう。彼らのサッカーはパスからの崩しを前提とするのである。

話を単純化するために、スペインに集中しよう。
スペインのサッカーはパスを多用する。それもショートパスだ。

彼らの持ち味はとにかくボールを奪われないキープ力である。
全てのメンバーに足元の高い能力が存在する。それがために、
細かいバスによるトラップミスなどを考慮しなくても良い。
とにかく、味方に渡しながら、三角形を前進させてゆくのである。

問題は、そのようにして相手陣内に入ってきてからである。
ストライカーに頼ってシュートを狙うというよりも、得点の一つ前も
あくまでショートパスによる崩しをいれるのである。最終的には
誰がシュートしてもかなりの確率で入る状態に持っていこうとするのである。

これを成功させるには、十分な足元のうまさが必要である。
細かなパスをダイレクトで回す技術が必要である。

この手法は手数がかかるため、回りくどく思われる。
ところが実際は、ボールを支配し、相手の焦りやミスを誘う。
キープしている間は自陣にとって不利にはならないし、
どこかで、パスがつながれば、ゴールの確率は高い。

このようにパスを多用したサッカーが現代サッカーである。
そこには、かつてのストライカーは不要である。
現に対イタリア戦では、ゼロトップという布陣であった。

これはざっくり見れば、個人vs組織といういい方もできるかもしれない。
そして、どうやらサッカーでは組織の方が部がありそうである。

イタリアvsスペイン、イタリアvsクロアチアにおいては、
新生とはいえかつてのスタイルを継承する個人能力に頼るイタリアと
組織で攻め上がり、組織で守るスペイン、クロアチアの戦いでは、
ほぼ互角の戦いになった。

スペインとクロアチアの違いは、おそらく体格差だ。
パスサッカーには小柄の方が向いている。
だからこそ、クロアチアは最後のフィニッシュに向けて、
大柄のマンジュキッチらFWに当ててくるのである。
スペインにはそのような選択肢はあまりない。
だからこそ、最後までパスを貫くのである。

こうやって考えてみると、ポルトガルは完全に、
個の力で戦っている。一瞬のすきからの得点が多かった。
このチームはどちらかと言えば、個人能力重視のサッカーである。

本大会では、おそらくパスサッカーが粘り勝ちすると思われる。
よって、スペインか、ドイツあたりが上位に食い込むだろう。
イタリアはピルロ次第。ポルトガルは運次第だろう。

クロアチアやデンマークはよいチームだが、個々人の基本的な能力で、
他のチームからみて分が悪いように思われる。

さてさて、どうなることか目が離せないユーロ2012である。
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