強い違和感ーその正体とは? [雑学]

少しプライベートな話題を。
こういう事を誰に言えばいいのか、ちょっと不明なのでここに記す。

昨日久しぶりに後輩の一人とZoom飲みをした。
元気そうで何よりだったのだけど、その会話の中で違和感を感じた事がある。

それは「アベノマスク」についての事だ。
彼がいうには、アベノマスクのマスク自体の意味はともかくも、
政府がマスクを投入するというアナウンスによって、マスク価格の下落効果が
あったというのだ。

それを聞いて、私は「は?」となったわけなのだが、
信用している後輩である。何か根拠があるのかもと思い返した。

私の見解ではあれは一種のパフォーマンスであったという認識である。
そして、何らかの利権構造による税金横流しの一環であるという把握であった。
よって、後輩が述べたことを吟味したことすらなかった。ましてや良い効果が
あったという認識すらなかった。

500億円ほどの予算をつけて、あの小さいマスクを何ヶ月にも渡って、
1住所に2枚送りつけるという事業。まずは批判点をあげると、

1.そもそも布マスクの実用的効果が不明なために、何のために配布するのかの
  第一義的意味が不明。配るならマトモに使えるものを配る必要があろう。

2.あのタイミングでマスクを配るという事に、どれほど意味があるのかという疑問。
  4月の頭に決めて、実際は5月の中頃より配布されているが、使用率は如何ほど
  あるというのか。きちんと事後的調査を行うべきだろう。

3.税金使徒が許容される範囲とはいい難い点。半不良品みたいなものに、
  一枚あたり、200円程度らしい。実際にはもう少し安かったようだが、
  これが適正なのかどうか不明。

4.選定業者の不透明さ。当初こそ、発表されなかった1社は最終的に発表された。
  ユースビオという会社は、そもそもマスクを製造販売していたわけでもなく、
  結局、輸入業者という形で受注している。どうにもキナくさい。こういう不可思議な
  金の動きがあるために、税金使徒に不信感が生まれる。他4社とも随意契約らしいのだが
  その根拠もまた不透明である。


さて、細かい事は、Wikiに譲ろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/アベノマスク#cite_note-150

この中で、実際に後輩が言うような効果があったというソースは、
政府側がしゃべった事だけに過ぎないとわかった。菅官房長官が「マスク配布による
マスク価格の押しさげた」という主旨のことを述べたらしい。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/16762
東京新聞の記事によれば、価格が高騰したのは、中国からの輸入が滞り、
供給が減った事に起因しているとの事。そして、4月あたりから値下がりに
なったのは、その供給がまた再開されたからだという。

私としては、そりゃそうだろうと素朴に思うし、まあ、当たり前の見解と感じる。

百歩譲って、アベノマスクが政府がいうその意味通りの効果がある仮定したとして、
アベノマスクが投入されたからというのは、どうにも因果関係が見えてこない。

4月1日に政府がマスクを配るとアナウンスし、4月7日に閣議決定している。
実際の配布は4月の下旬からだが、5月10日の時点で4.3%の配布率。
6月20日頃に全国的に配布終了との事。

マスクが手元に来るから、マスク需要が減ると考えて、マスクの在庫を放出して
売り始め、それによってマスクの値が下がったという考えだろうか。
すると、マスクが配布されたという発表後からのマスクの値下がりがどの程度か、
また、輸入の回復がどのタイミングであったのかを考慮すればある程度、関係がみえるだろう。


まずはマスクの価格変動。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000021601.html
このサイトを信用するならば、マスクの価格が下がり始めたのは4月24日である。

政府が配るといった事自体が影響したというなら、発表からこの23日間の
価格維持はどういう事を意味するのだろう? もし政府がマスクを配るなら、
マスク需要が減ると考えたとして、23日間もほったらかすだろうか?
マスクが配布されるまでは、価格変動はないと見越した結果というのだろうか?
素朴には、政府がマスクを配るというアナウンスに、市場が反応しているとは言い難い。

実際にマスクを手にしていないからだというのだとしたら、逆に
この4月24日あたりで配布されていたのは東京の一部に過ぎない(4月17日より)
https://www.j-cast.com/trend/2020/05/25386627.html?p=all
よって、政府が配り始めたから、価格が下がったのだとはやはり言い難い。

ましてや配布状況がオフィシャルに報道され始めたのは5月に入ってからだ。
5月8日のアナウンスをみれば、実際に配布がある事が明らかだったのは、東京だけだ。
https://web.archive.org/web/20200508155021/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/mask.html

よって、マスクを配るというアナウンス4月1日や7日においては、
マスクの価格に影響を与えず、実際にマスクの価格変動が始まった4月24日頃には
マスクの配布はまだほとんど始まっていなかったという事実が見てとれる。

つまり、マスクを配布するという政府の行動が、マスクの価格を押し下げ、
在庫を放出する事につながったとは、言い難いのだ。

ではなぜ、4月24日過ぎからマスクの価格が下がったのだろう?
東京新聞の記事に依拠すれば、単に需要過多で、供給が追いつかなかったものが、ようやく
4月終わり頃に追いついてきたという事になる。

https://toyokeizai.net/articles/-/344425
一般的にはこういう図式で需要と供給が変化する。問題は、いつ在庫が増えてきたかであろう。

https://pricesearch.jp/article/retail-05/
このサイトのECサイトにおけるメーカーの販売数をみると、2月から急激に増え3月で
ほとんど在庫を売り払って、4月以降は品薄であると分かる。よって、4月の終わり頃までは
そもそもマスクがなかったのだ。5月に入って少し回復が見え始める。ということは、
まさに、4月24日頃から、売り切れ状態にあったマスクの供給がみえてきたという事が
想定される。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000049563.html
4月27日に、トリニティという会社から、原価マスク販売のアナウンスが流れている。

https://ecdatalab.nint.jp/2020/06/01/mask_price/
ここをみると、既に1月の段階で価格高騰傾向がみられており、3月頃にはかなりの水準に
まで落ちてきている。加えて、ECサイトにおける原価マスク販売というアナウンス。

この辺りが通販サイトにおけるマスク価格変動のポイントだったのだろう。ということは、
4月中に供給の目処がつき、5月に向かって順次出荷された結果、じわじわと下がっていった
ということなのだろう。

東京新聞の業者のコメントが、もっともに聞こえる。
つまりアベノマスクなどほとんど関係なしに、市場の需要と供給のバランスで価格が
下がったのだろうという事だ。

そもそもアベノマスクは布製であり、繰り返しつかうことが前提のマスク。
不織布のマスクは競合ではないとも言える。よって、アベノマスクがマスクの価格低下を
もたらしたとする根拠はとても薄いといえよう。

価格変動のタイミングは、アベノマスクの動向とは関係しているようには見えないし、
ましてや配布されきったのは、結局6月の終わり頃だったのだ。

最後にどストレートな記事を。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6113eb8a311bdcc92089fc62e91e9f3e14c66695

3つのマスク価格下落の要因とあり、
1.中国などからの供給が増えたから(供給増える)。
2.ガーゼマスクに信頼感が出て自作派が増えたから(需要下がる)。
3.国内メーカーのマスク事業への参入(供給増える)。

ということで、ここではアベノマスクの成果を、ガーゼマスクでも代替可能であると
示した点にあるとし、自作派が増えて需要が減ったと考察している。なるほどありえる。
だが、それをもって、アベノマスクに意味があったとはとてもいえない。マスクを洗えば
大丈夫と広報すればいいだけのことだったのだ。それに果たして、自作の割合なんて
如何ほどというのか。

ざっと周りを見渡しても、せいぜい100人に数人程度ではないだろうか。それに、
自作するのは簡単に買えないというただそれだけの理由に過ぎないだろう。3つの要因に
入れるほどですらないはずだ。これは阿った可能性すらある。

どっちみち、マスクとしての使いみちがないアベノマスクが効果を
発揮したわけではないという結論でよかろう。




さて、それで問題はなんだったか。
それは、信頼する後輩のリテラシー問題なのではないかと。

そも直感的に、アベノマスクが愚策だと感じる。これが私の最初の印象だ。
筋が悪いとまずは感じる。この違和感は、マスクのクオリティのしょうもなさや、
利権構造を知る前から発生している。政府が1住所に2枚マスクを配るという、そのなんとも
言えないやり方だけで既に駄目な政策であると感じる。その配布コストや時間コストが直ぐに
頭をよぎるのだ。そのうえでマスク自体がどういうものなのかという事が出てきて、いよいよ
アウトだと確定した。これが私の初期判断である。

そしていざ配布されたのちも、使用者はほとんど存在せず、ただマスクを受注した業者が
儲かっただけ、政府は何か国民に対策したという雰囲気づくりになっただけであった。
こういう政策を愚策という。そして、私は愚策が嫌いである。税金返せと言いたくなるのだ。

ところがだ、後輩はどういうソースを辿ったのか、それとも自分で考えたのか、
アベノマスクには、マスク価格を押し下げるという効果があって、それが最大の評価だろうと
のたまった。つまりマスクが使えるか使えないかではなく、マスクを配布する事で、
世の中が動いて、マスクが供給されるようになったと考えているというわけだ。

私には、とんと不可解であった。会話終了後にすぐに検索してしまった。
その結果、そのような間抜けな考察をしたのは何を隠そう、内閣府そのものであった。
菅官房長官の談話が最初にひっかかるではないか。まさか、後輩はこれを見たから
なのだろうか? もう少し調べると、安倍政権のネトウヨサポーターが、同じように礼賛
しているものがいくつか見つかり、また、右翼系のWebサイトやブログにも同じ系統の
ものが散見される。どう読んでみても、信憑性がないものばかりだ。

そうすると、後輩の見識を疑うことになる。もしかすると私が勘違いをしていて、
アベノマスクによるそういう隠れた効果があるのかと思ったのだったが、やはりそんなことはなく、
上記のように調べても、効果ゼロではなかったのかもしれないが積極的な意味など
あるわけもない。

すると後輩の情報リテラシーが浅いのではないか?と疑われ、
もし自分で考えた結論だとすると、アホなんじゃないかと思われるのだ。。

安倍政権の発表の大部分はウソ偽りのオンパレードで出来ている。だから、
もし真実を述べているとしても、まずは疑う必要がある。それくらいに嘘つきなのだ。
それを後輩が「そうなのか」と思ったのだとしたら、お前の教養はどこにある?と
つっこみたくなる。

次に自分で考えた帰結だとすると、一体どんな情報によって、データによって
そう思うのかと問つめたい。私には、そのような傾向を伺うデータを発見できなかったからだ。
もし、アベノマスクの発表と配布時期と、マスクの価格低下の時期が重なっているという
事だけを頼りに、上記のことをいっているのだとすると、典型的な相関の罠にハマった事
になる。人は無関係なものに関係性を見出す癖があるからだ。それを侵さないために
リテラシーが必要で、そのリテラシーこそが能力である。


実をいえば、このように後輩の事実把握に違和感を覚えたのは今回がはじめてではない。
前回も、この20年間の不景気を差し置いて、第二次安倍政権を「好景気」と呼んだ事に
驚いたのだ。景気がよいならば、なぜ給与が増えない? なぜ増税する? なんで消費が
盛んにならない? 一体どこをどう読めば、今が景気が良いなどと思えるのか。

そうこれまた同じ事がいえる。政府発表では景気が良いことになっていた。(先日、
景気悪くなってましたと訂正が入っていたが。。)むろん、そんな事を信用できる
はずもない。GDPの計算を書き換え、年金資金で株をかい、国債を発行し続ける。
その上で、国民には10%増税を課する。そんな政府が発表する景気判断など、どう
信じろというのか。事実、景気がよいのは国の金を横流しされる業界であり、自社株を
国が買ってくれるようなところである。そういうごく一部の人間にとっては、そう
実感できるのかもしれない。

私はこの後輩とのリテラシー的ズレに驚いている。知性としてバカとは思ってない。
論理性が低いともだ。だとしたら、一体、何が認識を違えているのだろう??
まさか、自分の実感にないことを口にするとは思えないのだ。ともすれば本当に
実感しているのかもしれない、なぜなら彼は経団連に所属する会社に努めている。

およそ、世間ずれした感覚は、そういう周りとの兼ね合いがあるのだろう。
そしてきになることは、彼がどんなソースを元に話をしているのかである。

大手のメディアはとかく政権批判をしない。むしろ政権の広報である。
そこに電通が絡み、金が動く。加えて彼はニュースに課金をしない。新聞をとったり、
雑誌を読んだりしない。もっぱらウェブサイトのニュースをベースにしている。
結果として、無料ニュースばかり見る彼が、偏った地方紙たとえば産経新聞などの
ソースを読んだとして、それをそのまま鵜呑みにすることは大いにあり得る。

先頃みかけた、内閣支持率などをみても、新聞によりとんでもない差がある。
同じアンケート結果とは到底思えないほどだった。ソースが一つであることは
とても危険である。

おそらく、彼はニコ生系のニュースや、まとめニュー速あたりを参照している
のだろう。その手の中にはネトウヨ系のソースも多分に含まれている。

そして、もっとも恐ろしいのは日常が正常であるというバイアスである。
特に若い世代ほど、今の状況を普通と考えることだろう。そんなわけがないが、
彼らは比較対象を持たないのがよく分かる。

後輩の唯一の比較対象は、2011年時の民主党である。あの時の原発問題と、
政権のゴタゴタさがよほどかメディアにバッシングされていた。そのような
言説を受けて、政府批判がウケる時代になっていた。ミンスと呼ばれた時代である。
それに比較したら「マシ」だという安倍政権。そういう認識がベーシックに存在する。

私からみたら、あまりにも愕然とする思考回路である。
そして不勉強極まりない。民主党の政治家たちの半分はもと自民党である。
似たりよったりだ。そして、政治家主導の政治を稚拙に推し進めたがゆえに、
官僚たち、既存勢力に叩きのめされたのだ。おそらくアメリカなどから圧力が
あったのだろう。アメリカに利益をもたらさぬ、邪魔する政権は、叩くというのが
日本メディアのあり方なのだから、仕方がない。

そうして、自民党に比べればいささかマトモにみえた民主党は、
自ら瓦解し、管政権でTPP、野田政権で増税と、ちぐはぐな政策を掲げて頓挫した。
私にはとても残念な出来事だった。なにより小沢内閣が誕生しなかったことが、
最大の問題だったろう。彼がどのように指揮をとるかは、ひとつ賭けになったのにと思う。

その民主党に比べたら安倍政権がマシ?? バカも休み休み言えといいたい。
ロクでもなかった民主党より輪をかけて、愚かしいのが安倍政権である。

後輩がその政権をどこかしら支持している事、そして、彼の生活は少なからずその
既存体制から益を受けている事。そういった事が頭をよぎり、いたたまれなくなった。

自分がよけば良いとお前、おもってんじゃないか? と言い出しかけた。


学歴エリートの彼は中高一貫校育ちである。
非常に偏った意見を言わせてもらえば、受験の勝利者と自覚する人間は、おぞましい自己中心的
人間である。彼らはどこか、勉強ができないことは、100%本人のせいであると思っていて、
落ちぶれた人間はただ努力が足りないだけと信じ込んでいるようにみえるのだ。

その目線の高さが、俗物っぽさを冗長する。その無神経な思想が、共同体を不安定にさせ、
分裂を生む事を理解していない。人生をゲームにみたて、その勝者になればいいという
思想が透けてみえるのだ。

私から見れば、後輩はただ未熟だなと断定するのみなのだが、果たしてそれでいいのか。
私は彼のような人間を他に知っている。その彼らもまた、安倍政権支持者であった。
保守という言葉を履き違えているような人間であった。

この違和感はどうすればいいのだろう? 人は他者に親切であるべきだ。
可能な限り、弱者は守るべきだ。出来ないことまでやる必要はないが、自分を人生の勝利者と
位置づけ、くすぶっている人々をもって、努力不足だと一蹴するのは、甚だ間違えだ。

だが、どうも、昨今の若者にはそういう面を感じて仕方がない。
とりわけ、20代後半から30代真ん中までの男にだ。とても危険を感じる。

自分がやられたらどう思うのか?という想像力の欠如があり、
ナイーブに自分の正義を当てはめる。そういうのを無邪気と書いてバカと読むのだ。
決して褒められたことじゃない。人間として、立ち方を間違えている。

都会に済む、若い男で、学歴エリート。そういう人間たちの一部にどうも、
嫌悪感を抱く。その根底にある思想に嫌悪する。それはホリエモンを信奉したり、
藤原和希を称揚したりする若者たちだ。効率主義で、役立たずに用はないという切り捨て
を感じる。心がない感じといえば分かるだろうか。

このような人間たちが国の主要な場所に生きている。官僚になったり、大企業の役員になる。
権力を掌握するわけだ。遅かれとも。私には、日本は滅びを選んだとしか思えないのだ。

他者を、とりわけ弱いものを守るという、組織として当たり前をどこか忘れやしないだろうか、
そう若者たちに問いたい。というか、お前ら、人として浅はかなままでいいのか?と言いたいのだ。
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