習慣とは?ー現状維持バイアスー [思考・志向・試行]

もし、仮に地震予知ができるとしよう。
明日の午後2時に地震がありますと言われてはたして
どれくらいの人が避難するだろうか?
それも小さな地震ではなく、大きな地震だけが予知できるとしてである。

今朝のニュースで、GPSをつかった地震予知について
話をしている研究者がいた。日置幸介教授である。
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2070

こういう技術があれば、当然ながら予知というものが具体的になるわけだが、
人はたいてい目の前に起こるまでは信じないのである。

それは今回の津波でも明らかである。
目の前にまで、危機が迫らなければその異常さに気が付かない。
これを認知科学の文脈では現状維持バイアス(statusquobias)と呼ぶ。

そして脳科学的なアプローチもある。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20231462

この意味は、強い動機がないと現状を変更しようとは思わないということだ。
つまり人は「うまくいっている」と思っている限り、状況を変えようとしないことになる。

しかしながら、状況が大変な場合には、人は考えを変える。
その過程は結局のところ、目の前に危機がせまらないと理解できないのである。

現在茫漠と過ごしている日常ですら、
本当は難しい選択を迫られているのかもしれないのだが、
普通は、そういう微妙な変化にとらわれることなく人は生きる。
なぜなら、それが効率的であり、経験だからだ。

多くの中高年は、それを体験し理解している分だけ、
目の前の情報に踊らされることが減るわけである。
逆にいえば、頭が固くなり、柔軟な思考を妨げるということでもある。

現状を維持する能力とは結局、慣れである。
慣れをあなどってはいけない。日々は慣れを形成する訓練の場でもある。
毎日の習慣を変えることがいかに困難かは明らかだろう。

授かり効果という自らが持つものに対して価値を大きく見積もるという
ものもある。同じものを得るのと失うのでは、その価値が変わってしまうのだ。
既に得たものはどうしても大きく評価しがちであるということだ。
逆にいえば、今手元にあるものを大切にする心理でもある。

何かを失って初めて得るものがあると思い込めなければ、
状況を変えようとはしないものだ。いやむしろほとんどの場合は、
否応ない状況に立たされたから変えるのかもしれない。
業績悪化が目に見えて初めて、組織改革に乗り出す企業のように。

現状に多少の不満があっても、それが決定的でなければ、
それを続けてしまう。多くの故人はそれを戒めてきたが、
結局、人は同じ過ちを繰り替えすのである。

不確実な未来に何かを託すより、確実な現実を掴み取ろうとする。
ごく当たり前の心理でもあり、それが人生でもある。

後悔とは、もしかすると現状維持バイアスに対する反省なのかもしれない。
「あの時、ああしておけば」というイマジネーションがそれを規定する。
でもよく考えてみれば、そうではない人生を築いたのもまた事実である。

常に現状を、今を肯定できるように日々を過ごすしか
我々にはできないし、それ以上の何かを求めるのは少々よくばりなのかもしれない。
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